形成外科 医 一瀬晃洋(いちのせあきひろ)|美容外科・形成外科|神戸・大阪・和歌山|眼瞼下垂

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和歌山の皆様お世話になりました

こんにちは。
一瀬晃洋です。

およそ1年ぶりにブログを更新します.
(開業の忙しさに負けて申し訳ありませんでした.)実は...

私の和歌山市の眼科での診療(眼瞼下垂手術)がこの3月で終了します...

和歌山市で手術を始めたのは2003年。ことしで16年になります。これまでの症例数の概算をしてみると、和歌山だけで年間150眼、16年でのべ2000眼もの眼瞼下垂の手術を行ったことになります。ここ和歌山での診療を通して経験させて頂いたすべてのことは、今の私にとって欠かせません.全力で振り返ってみたいと思います.

和歌山 眼瞼下垂手術 いちのせ形成外科

和歌山市での診療は1~2回/月、午前中は外来で、午後が手術枠です。手術症例のほとんどが眼瞼下垂症手術です.眼瞼下垂症手術は1-2年で急増し、午後の手術枠では通常12-14眼くらいの眼瞼下垂症手術を行います。ほとんどの患者さんが腱膜4点止めの部分切開法眼瞼下垂手術です.スムーズに完了して1眼15分程度必要です。手術の入れ替えの時間、写真の撮影、消毒などを含めて1時間で3眼くらい。12-14眼ですと休みなく手術して合計4-5時間くらいかかります.まさに2000m級くらいの山を登る感じです。いつも手術開始前に当日の手術患者のリストを確認しますが、少々険しい山に見えます.「遭難しない様に登りきる...」と気合を入れて手術に臨みます.

手術は山登りと同じで、つまずかないように一歩一歩着実に登り続けます。集中力が切れると転倒し遭難(失敗)します.集中力を切らさないためには疲れない様に手術を進めることが重要です。
人間の集中力には限りがあります.集中してしまうと集中力は数十分もすれば尽きます.ので逆に努めて集中力を使わないように淡々と手術を進めます.決してアクセルを踏まず、無駄な動きや止まって考える時間を省き正確に手術を行うことで、結果として手術は早く終わります.全症例の半分の手術がを完了するあたりまでは、ゴールの山の頂点がものすごく遠く感じます。手術がすべて終了するまで集中力を残しておきます.ゴールが近くなるとややハイな精神状態になりますが、集中力が残っているかを確認しつつ注意して乗り切ります。

なぜ手術を早く終わらせる必要があるのか?局所麻酔下の手術では、手術時間が長いほど満足度が下がる傾向があります.トラブルが生じないようにしながら可能な限りスピーディーに手術を行うように努めないといけません。まぶたが上がりにくい患者さんや、まぶたが腫れぼったかったりまぶたの組織が固い患者さんの手術は長くなりがちですが、このような場合に迷うことなく必要な手技を漏らすことなく施行していくかが成功のカギです.

 和歌山市では、患者さんの手術待ちがかなり長くなってしまった時期があったため1日7時間ほど眼瞼下垂症手術を行ったことがありますが、その時の最多記録は一日20眼ほどです.一日にこれより多い眼瞼下垂症手術を経験されている先生はおられますでしょうか?このような豊富な症例を頂いた自分を、形成外科医としてとても幸せ者だと思います.和歌山市の患者の皆様からは、治療技術のみならず、精神力(手術を確実に遂行するための)の鍛錬の貴重な経験を頂きました.患者の皆様、重ねて感謝申し上げます。大学病院勤務時代は、ここ和歌山市の診療は月に一回の最も骨の折れる一日でした. しかし、いちのせ形成外科を開業してからはもっと忙しい毎日が続き、和歌山市での診療は楽な一日に感じる様になってしまいました.....

和歌山では診療を終了させていただきますが、手術された患者の方々にもし何か問題が生じれば「いちのせ形成外科皮膚科 眼瞼フェイスクリニック」にご相談頂ければ対処可能です。JR尼崎ですので遠くて申し訳ありませんが、ご相談頂いたその日のうちにできることは対処させていただきます。

眼瞼下垂:和歌山市で学んだこと

和歌山市での診療を通して、眼瞼下垂の術式の様々な改良を行ってきました。

【小切開法(部分切開法)の改良】

部分切開法の開発を行ったのもこの地です。全切開法での侵襲があまりに大きいため、米国の医師の方法を参考にして小切開法(部分切開法)に移行しました.部分切開法にしてからは手術のマグニチュードがとても小さくなり、片方で15分程度の短い時間で可能になりました。半日で14眼の手術を行うことが可能になりました.「ちょっと切ってちょっと上げて貰った」と患者さんに言って頂ける術式が私の眼瞼下垂手術の理想ですが、これに遠くない術式となりました.

部分切開法は、手術時の痛みが少なく、術後の腫れも少なく回復が早い、傷跡が目立ちにくい変形するリスクが小さい、など利点がとても多い方法です。切開を小さくすることで生じる欠点を補うためにいくつかの改良を行いました.腱膜の固定点を4点に増やすことで挙上力を強化し、皮膚を切除する代わりに軟部組織の処理の工夫をして開きやすいまぶたを作ります.症例を重ねるに連れ部分切開法の良さを実感し、ほとんどの患者さんに用いるようになりました.現在でも改良を続けています.

部分切開法は、低侵襲の眼瞼下垂症の手術として今最もおすすめする方法です。最近は全切開法はほとんど使用しなくなりました。私自身も年々眼瞼下垂がひどくなっておりますので、いずれはこの部分切開法で手術を受けると思います。

【ルーフ切除術の開発】

和歌山では、腫れぼったいまぶたの眼瞼下垂の患者さんが多く来院されました.腫れぼったいまぶたに対してはルーフ切除術が有効ですが、この術式を完成できたのもここ和歌山での眼瞼下垂症手術を行うことができたからです。

ルーフ切除術は、とても腫れぼったい患者さん専用の眼瞼下垂術式として作りました.当時の眼瞼下垂の術式はほとんど全切開法でしたが、腫れぼったいまぶたの患者さんに全切開法を行った場合術後の結果が良くない傾向があったのです.ルーフ切除術は大分以前に報告されたもので、もともとは西洋人への手術で、眉毛の下らへんのふくらみをとる手術でしたオリジナルの論文をもとに、アジア人用に3段階のルーフ切除術(部分中隔前脂肪切除術、全中隔前脂肪切除術、拡大中隔前脂肪切除術)を開発しました。ルーフ切除がきれいに決まると、とても開きやすく恰好も良いまぶたになります。

最近は眼瞼下垂に対しては部分切開法を用いてますので、ルーフ切除を眼瞼下垂症に用いる機会は少なくなりました.しかし、ルーフ切除術は美容外科の二重まぶた手術で生き続けており、最近は全国的に普及してきたと思います.腫れぼったいまぶたをすっきりとした自然な二重瞼にするために、ルーフ切除術がとても有効です.

その他にも、三角(さんかく)眼を防ぐ腱膜固定法左右差のある眼瞼下垂の腱膜調整法眼窩脂肪の処理法二重まぶたの安定した作成法眉毛固定術など、和歌山市での診療で習得もしくは開発してきた術式は挙げればキリがありません.

【眼科の先生とのコラボ】

眼科医師(眼科松本クリニック:松本英樹院長)とのコラボをさせて頂き、多くのことを勉強させていただきました.眼瞼下垂の治療に関連した前眼部障害や視機能の変化その他について、その取扱いや治療に関する知識は、眼瞼下垂手術を行う形成外科医には必要なことです.何より、眼科の先生の考え「眼から見た眼瞼下垂症手術」を学ばせていただき、自分では一皮むけたような思いが致します.感謝申し上げます.

 


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